フォーカルジストニア

音楽家・楽器演奏家の職業病と言われる「フォーカル・ジストニア」。

少し前までは医療関係者の中でも認知度が高くはなかったこの疾患。
一体どのような症状があり、原因は何なのか。

完治することはできるのか?

今回はフォーカル・ジストニアについて説明していきます。

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フォーカル・ジストニアとは?その原因は?

局所性ジストニアとも言われるフォーカル・ジストニアですが

『フォーカル』とは「焦点」

『ジストニア』とは「脳や神経系統の障害で筋肉が収縮したり固くなる疾患」のこと。


特にジストニアについては、「持続的または不随意的に起こる難治性の疾患」とされています。


具体的な症状は、自分の意に反して身体が動いてしまったり
動かしたいと思ってもうまく身体が動かなかったり。


楽器演奏に関するときだけ思うように動かなくなり
日常生活では全く症状が出ない場合があります。


最近では音楽家や楽器演奏家の職業病として認識されていますが、この疾患の認知度が低かったときは、自分の体がうまく動かないことに対して「練習不足・テクニック不足」と判断し、猛レッスンをすることから症状を悪化させてしまうケースがとても多かったようです。


自身がフォーカル・ジストニアか判断する項目としては、以下があります。


① 自分の意に反して勝手に身体が動いたり、動かしたいときに動かなかったりすることがある(痙攣が起こることもある)


② 脳出血などの脳疾患はない


③ 同じ姿勢での作業や同じ動きを繰り返す業務に携わっている


④ 業務中にのみ症状がでて、日常生活では特に問題がない


このような症状がある場合は、フォーカル・ジストニアの可能性が高いため、一度診察を受けることをお勧めします。


また、発症部位として多いのは、手や指先、管楽器演奏者は口の周りなどです。


演奏などで酷使する部位がフォーカル・ジストニアとして発症しやすいと言えます。


ピアニストやギタリストの発症例が多いようですが、どちらの楽器も演奏家の分母が多いので自然に発症例も多くなるのでしょう。


特にピアノやギターが発症しやすいということではないようです。

フォーカル・ジストニアの原因はいくつかあるようですが、身体の一部を長時間酷使することが一番の原因ではと言われています。


音楽家や楽器演奏家の約10%が罹患しているとの報告もあるフォーカル・ジストニア。

もし自分がかかってしまったらどうしよう、と心配になる方もいると思います。


次は、治療方法などについて説明していきます。

フォーカル・ジストニアは治療とリハビリで完治する?

フォーカル・ジストニアの治療法としては、薬物・手術・刺激療法・針灸治療などがあります。


① ボツリヌス注射


問題を起こしている筋肉にボツリヌス毒素を注射することで、
その筋肉を麻痺させて痙攣を抑える治療法です。

フォーカル・ジストニアの治療法として多く用いられている方法です。
注射の効果は3ヶ月程度のため、必要に応じて何度も注射を受けることになります。


② MAB療法

エタノールやフェノールなどの薬品を筋肉に注射し
麻痺状態を作ることで痙攣を抑える治療法です。

ボツリヌス注射と比べると効果は衰えますが
MAB療法の方が費用は安く筋力低下も生じにくいのがメリットです。

週1〜2回の注射を数回〜10回程度行います。


③ 定位脳手術

この手術では、脳深部に細い電極を留置して、熱凝固を行う「凝固術」
持続的に電気刺激を与える「脳深部刺激療法」の2つがあります。

このことにより、フォーカル・ジストニアの症状を改善させます。

「凝固術」の場合は1回の手術で治療を完了させられるメリット
「脳深部刺激療法」の場合は、脳の組織破壊をせずに効果が得られるというメリットがあります。


④ tDCS(経頭蓋直流電気刺激)

頭皮の上から電流を流し脳に電気刺激を与える治療法です。
副作用が少ないと言われています。


⑤ 針灸治療

針灸で身体を整えて、改善させる方法。
小さな身体の歪みが他の要因と結びついてフォーカル・ジストニアが起こっている場合
身体を細く整えていくことで改善されるケースもあります。


フォーカル・ジストニアの症状により治療法を決めていきますが、上記の治療法で完治に近い回復が見られたケースもあります。


また、リハビリで症状が改善に向かったという話も聞きます。

リハビリを行う際は、症状の出ている部位を休ませるため
症状の出る行動から離れる必要があります。

「楽器の演奏で症状が出ていればその楽器を演奏しない」ということです。


思うように動かせなくなった部位を意識し
現時点で可能な範囲で動かしていく、これの繰り返しです。


フォーカル・ジストニアが発症する原因は明確にはなっていません。

ご自身の精神的・身体的な面も関係しているようですが、日々の食事による栄養摂取や睡眠など、生活習慣が関わっているのではという意見もあります。


近年では、世界各国でフォーカル・ジストニアに関しての研究が進められ
発症要因や新たな治療法の開発につながっている報告もあるようです。


フォーカル・ジストニアを発症しても見た目は今までと大きな変化がないので、周りの理解を得ることはとても難しいでしょう。


患った人たちの精神的なダメージは計り知れないはずです。

次は、フォーカル・ジストニアで苦しんでおられる方たちの事例を紹介していきます。

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フォーカル・ジストニアで苦しむ人の事例紹介

<ギタリスト 治療方法:定位脳手術>


右手の親指が意図せず内側に曲がってしまう症状が出始めリハビリを開始したが、字を書くことも困難になるほど悪化したため手術を決意。

手術直後は、若干ろれつが回らなくなるなどの後遺症も出たが、半年ほどで後遺症はなくなってきたようです。

発症前の90%までは回復したが、それ以上の回復はまだ見られず、現在はフォームの調整やリハビリを行っているそうです。


<サックス奏者 治療方法:針灸治療>


口唇のフォーカル・ジストニアを10年以上前に発症。
症状は、サックスを吹くと右の口角から息が漏れ、演奏を続けられなくなるというものです。

発症後、薬物療法などを試したが効果が認められず、年々症状が悪化していたため針灸治療を検討。
3回目の施術後には症状はかなり改善され、その後も定期的に通院をしているようです。


<ギタリスト 治療方法:心理療法>


10年以上前から右手の人差し指と薬指が自分の意思の通りに動かなくなる症状が出始め、セラピーでコンプレックスによる精神的な要因が強いと判断されて心理療法を始めたそう。

1ヶ月に一度の通院を2回行い、症状が回復していったようです。




どの方も、周りの理解を得ることがとても困難だと言っています。

また、支えてくれる家族や友人の存在は、精神的にも肉体的にもとても大きいものだそうです。

リハビリを続けるということは、思うようにいかない現実と向き合うことでもあるため、大きなストレスを抱えながら克服していく必要があります。


フォーカル・ジストニアの回復には、頼れる存在と強い精神力が必要不可欠なのではないでしょうか。

まとめ

フォーカル・ジストニアは、広く認知されるようになってから月日は経過していますが、未だ解明されていない部分が多い疾患です。

治療方法も様々なため、自分に合った医師や治療方法に巡り会えることは幸運なのかもしれません。

研究が進み、辛い思いをされていた症状が改善していくことを望みます。

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